救世の詩



かつて「魔女」という烙印を押しつけ排除していった「魔女狩り」は

風の時代となってカタチを変える

磔にして火あぶりにしたかつてのカタチは

晒して罵倒し抹殺するという「風の時代」のカタチに変わる

幕末の「人斬り」も風の時代では「言葉」で抹殺するカタチとなる



いつの時代も人々は【贄】を求めてやまない

救世主を求めるその心は

【生け贄】を欲しているだけである

『自分ではない誰か』が【贄】となってくれればいい

【贄】となるなら【救世主】と崇めよう

「我らを救うために【人柱】という【贄】となってくれ」

「【贄】を差し出すから我らは救ってくれ」



「魔女」を柱にくくりつけ 人柱として燃やし尽くした

「天誅」の名の下に 未来を「生け贄」として斬り捨てた

【悪】を【贄】とすることで 自分は【善】に近づくと

「善きことをしたから自分は救われる」と

自分では無い「誰か」を悪とし【贄】として神に差し出す

【贄】を求むる神とは・・・



「自分はそんなこと思いもしない」と多くの人は言うだろう

だが日々の自分がしていることが、それを如実に表している

ごく当たり前のことのように【贄】を求めているのである

四角い画面の向こう側に【贄】を求めて彷徨っている

人が集えば「今日は誰を【贄】にお話ししましょうか」



きれいなものを汚すほど得られる快感はひとしお

きれいであればあるほどに 汚し甲斐があるというもの

救世主という美しき【贄】を 求めてやまぬ人の渦

自分に足りない「美しさ」

自分に足りない「清らかさ」

穢せば穢すほどに「安堵」を得る

「それが私を救う救世主」

穢して汚して地に落とし 気分爽快心晴れやか

「ほらこんなにも心晴れ晴れ、きっと神に近づいた、善いことしたから近づいた」


今日もどこかで【贄】を求める 悪魔懸かり 霊懸かりたち

言葉を尖らせ斬り結ぶ 【贄】を求めて斬り結ぶ





誰かのために働くことなど 何処かの誰かがやればいい
心無くとも応援するから 応援しているフリをするから
せめておこぼれ下さいな
施餓鬼の饅頭下さいな

自分が目立てば贄になる
だから自分はそこには立たぬ
穢され汚され斬られる場所に
褒められようともけっして立たぬ

穢す自分がいるゆえに 穢されることを恐れある
斬りつける自分がいるゆえ 斬られることを恐れある

斬られず焼かれず穢されず 恵みのおこぼれある場所で
虎の威を借る狐となって おこぼれだけをいただきます
狐懸かりのあざとき心 虎の威を借る天狗鼻



救世するものを贄となす 救世するものが悪となる
素戔嗚命を悪として 救世の贄に差し出した
愚かなるかな人の世は 同じ誤ち繰り返す
神から離れた御霊たち 彷徨い還れぬ御霊たち